鶴岡
1)担当社員から電話があった。こころもち、トーンダウンした様子。春から転勤が決まったという。山形です。ほう、山形のどこ? 鶴岡です。自虐的な笑い声にさえなる。
2)鶴岡? ほう、それはよかったね。いいところだ。私の好きな城下町。藤沢周平記念館があるよ、行ってきた、去年、もう一昨年か。彼はどうやら、この高名な作家の名を知らないらしい。無理もない。
3)藤沢周平のファンは、中高年に多いだろう。日本的田園風景、下級武士、庶民生活、その背景は、郷愁を強く漂わせる。かく言う私ごときも、3・11を体験し、還暦も通り越してから、ようやく藤沢周平と出会った。決して若者の読みものではない。
4)大学を出て、1〜2年目の若者には、山形の、鶴岡の、というのは、少し酷なのかもしれない。できれば、もっと都会的なところ、せめて列島の正反対の地域の、未知の地域に飛び出したいに違いない。
5)2年前の私の三大噺は、ロードスター、ハワイアン、そして藤沢周平だった。8月初め、レンタカーのロードスターを借り出して、ハワイアン気分で、鶴岡の藤沢周平記念館に疾走した。残念ながら、ロードスターは赤くなく、白かったし、ハワイアンのCDは、歯医者さんが供出したものをたくさんいただいてはいたが、カーオーディオでかける余裕は、なかった。
6)そして、いざたどり着いた藤沢周平記念館は、想像していたより、小さかった。そもそも、その日は、台風が近づいており、しかも、歴史上でも珍しいと言われた、日本海側から上陸すると言う台風だったのだ。私は、台風に向かって、オープンスポーツカーを走らせたのだ。
7)片道3時間の行程は、傘を差して車から降りるのも難しいぐらいの豪雨にも遭ったし、雲間から日差しが差し込む瞬間もあり、フルオープンにして、高速を走れる区間もあった。ふと耳をすませば、蝉時雨。切間のない、真夏の蝉時雨が、車の爆音よりも遥かに、大きく続いていた。若者よ。落胆するではない。記念館で購入した藤沢周平「映像の世界」を餞別にあげるから、どうぞ、鶴岡での青春を満喫してほしい。
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