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2021/05/30

素晴楽堂日記<41>

<40>からつづく


素晴楽堂日記<41>

1)蔵書整理、並びに書庫整理中である。書庫といっても明確にそう名付けられた空間はない。身の回りに書籍類を乱雑に積み上げ、適当に利用してきた我がライフスタイルにおいて、常に書籍は友であった。書物のない人生は、何もない無為の日々であり、そもそもそのような人生は想定できない。

2)されど、還暦もとうに過ぎ去り、古来稀なる年齢もはや秒読み段階になってくると、かつて若かりし頃はまなじり決して、論敵を萎縮させた我が眼力も、すでに老眼さえ通り過ぎ、今や、開けているのか寝ているのかわからぬ始末。読書や速読にいそしんだ日々はとうにすぐ去ってしまった。

3)多数の書籍、それが愛読書であれ、積ん読書籍であれ、とにかく本に囲まれていれば幸せ~と言う時代すら忘れかけている始末である。今となっては、ほんの数冊、特にお気に入りの読みかけの本が、枕元なり、部屋の片隅にあり、たまに視界に入ってくる程度で十分なのである。余計な印刷物など、邪魔な蛇足物に過ぎなくなってしまった。

4)そこで思い立つのが、本の断捨離、大量処分である。もう読まない。気にくわない。面白くない。時代に合わない。難しすぎる。簡単すぎる。不要。意味不明。重すぎる。敗れてしまった。一時利用に過ぎなかった。悪影響を受ける。一方的な贈本。紛れ込んできた家族の本。読み捨て週刊誌。断捨離の対象になる我が蔵書は数限りなくある。

5)しかし、いざ取り掛かると、そう簡単にことはすすまない。書棚の隅々を掘り出し、ダンボール箱を開け、おもむろに放り出してみるのだが、一冊とて観念している奴はいない。俺こそは、残るべきthe一冊であるかの如く自己主張し始める。見苦しいといえば確かにその通りなのだが彼らの言い分も、わからないでもない。

6)使い切った歯磨き粉チューブのように、まるで空っぽになってしまった本など、一冊もない。腐り切って、異臭を放っているような煎餅のような本もない。枯れて花びらが全て落ちてしまったような本も、一冊もないのである。歯を磨こうと思えば磨けるし、かじろうと思えば、確かに音がする。花びらだって、一枚も散っていない。満開のままだ。

7)確かに表紙はかすれ、ページは黄ばみ、背表紙は割れてちぎれそうになり、角は折れ、若干湿気で波打ったりしていなくもないが、書籍として見た場合、それらもまた立派な書籍としての履歴となる。箔がついたとさえ言えなくもない。確かに言い分はわかる。

8)う~ん。悩む。

9)かくて、わが断捨離、蔵書整理、書庫整理は、難攻不落。再考を強いられる。

10) no books no life

つづく

 

  夏近し七つ菜成りて野の畑     把不住

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