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2021/03/04

龐居士(ほう こじ)の語録<3>

<2>からつづく

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龐居士(ほう こじ)の語録<3>
山田 史生 (著) 2019/04 出版社 : 東方書店 単行本 : 516ページ

★★★★★

1)K居士には目下悩み事がいくつかある。悩み事といっていいのか、その問題は別々に独立した問題なのか、というとそうでもない。結局は還暦まで自分が貫き通してきたライフスタイルの帰結なのであり、それらはそれぞれに関連していて、同根だと言える。

2)つまりは、自身が四百年続いてきた家の当主であったにもかかわらず、独身を貫き通してきたので、後継者が存続しないのである。家業というほどの家業は途絶えてしまったが、財産はある。切り売りせずとも、運用で十分生活は成り立つ。場合によっては、一家を再建するための基盤はまだ残っている。

3)しかし、晩年を迎えて、彼は自ら守ってきた墓地をどうするか、決めかねている。つまりは、20代近く続いてきた先祖たちの供養を、一体、誰につがせるか、いいアイディアがないのである。親戚縁者がないわけではないが、運悪く適任者がいない。

4)ここ何年かの間に、次第に固まってきた案は、墓じまいし、自分も無縁仏の集合墓に入るというものだった。それも良かろう。また、現在のところ、それしかあるまい、と思われている。

5)ところが最近、状況が少し変化した。400年の歴史を支えてきた菩提寺が宗旨替えをしたのである。もともと禅宗のお寺であったが、正式に言えば、そのお寺にも後継者がいなかった。住職の子は何人かいたのであるが、こちらも適任者がいなかった。

6)そもそもお寺の運営というものは、住職がおり、何軒かの檀家があり、お寺とお墓がある。地域の人々が、どこからか僧侶を探してきて、住職 に据え、地域の宝として、共同で支えていくものであった。そして、独身の住職は、地域の家から小僧をもうしうけ、次代の住職に育てていく習わしであった。

7)しかし、明治以降、僧侶の妻帯が普通になった時代において、寺院運営も家業となり、僧侶夫婦の間に生まれた子のうちから、次代の住職を育てるようになった。子沢山の住職夫婦ならそれも可能であったであろう。中に確かに適性のある子供がいる場合が、多かった。

8)全てがそうであれば良いのだが、必ずしもそうならず、あるいは子供が産まれず、時には、僧侶とて、離婚という事態に遭遇する場合もある。そのような時、いったい、お寺はどうなってしまうのか。

9)K居士が直面している問題は、この状況と連動している。禅を愛するK居士は.無縁墓とは言え、代々のその禅宗のお墓におさまろうと思っていたのである。最近までは、何の疑いも持たなかった。

10)その状況が、最近変わった。菩提寺の次代の住職に名乗りを上げた女僧は、元の住職の子はではあるが、ピアニストでもあり、独身であるという。そこまでは許容できるとして、その女僧は、そこそこの修行をしただけで、禅宗から離脱して、単立寺院としてしまったのである。ここがK居士には許せない。

11)女僧は意気軒昂である。どうせ最後は私に法名をつけてもらってあの世に行くのでしょう。私に従っていた方が身のためよ。確かにそうではあるが、それはそれでどうも納得がいかない。あの女なんかに法名などつけてもらいたくない。そこで、K居士は近隣に別の禅宗のお寺を探し始めたのである。

<4>につづく

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