「京都人の密かな愉しみ」源孝志 他 <8>

「京都人の密かな愉しみ」 <8>
NHK「京都人の密かな愉しみ」制作班+源孝志 (監修) 2018/03 宝島社 単行本: 186ページ
★★★★★
どうしてこのドラマに私はつかまってしまったのか。せっかくDVDが5枚もそろっているので、ここでかなり荒っぽいやり方だが、5枚のDVDのうち、まずは一番面白いと思う部分をまずは抜き書きしてみよう。
その前に、メインの沢藤三十八子とエドワード・ヒースローの絡み、これは別格なので、別途検討することとする。そして、最も個人的関心からはずれている京料理シリーズは、最初から外すこととする。
そうなれば、あとは気になるのは、「京都人物語」あたりとなるだろうか。
1「エピソード1」 第一作だけに、キチンとコンセプトが出来上がっていないのか、と思いきや、まったく逆である。「わたしの大黒さん」にも胸キュンとなる。それに「桐ダンスの恋文」。こちらも胸キュンキュンである。外から見ればうらやましそうな京都人の暮らしも、結構悩みが伴う。また、京都ならではの一生というものを突き付けられる。
2「夏」ここでは、京都人物語の「真名井の女」と「木屋町 珈琲夢譚」が拮抗する。これは選べない。どちらもいい。水に関する味覚の問題である。私は、三つの銘柄の地酒会社に水を提供する井戸を持つ農家に生まれたが、幸か不幸か、水を味わい分ける力には恵まれなかった。そのことに対する劣等感と、うらやましさ、それが、この二つのドラマにつかまる理由だろう。
3「冬」「えっちゃん」もなかなかよかったが、一番のインパクトは「京都人の幻のかに」であろう。エドワード・ヒースロー物だが、私のまったく知らない世界を、田舎を舞台にして展開されているところがいいのだろうか。それと伊武雅刀の、山寺のとぼけた住職ぶりがなんともいい。
4「月夜の告白」 ここは「月待ちの笛」で決まりでしょう。其の一、其の二と分割されているが、ひとつのドラマだ。淡い恋心、大人の恋、そして竜笛、喉笛。生活と歴史が文化として溶け合っている。
5「桜散る」 そして、最終章は「逢瀬の桜」其の一、其の二です。主人公が仏師の娘というところがなんともいい。演劇をやっているところもいい。佐川満男のおとぼけぶりがなんともいい。
ここまで来て、敢えてランク付けするとすれば、
1、「逢瀬の桜」
2、「月待ちの笛」
3、「桐ダンスの恋文」
4、「わたしの大黒さん」
5、「木屋町 珈琲夢譚」
6、「真名井の女」
7、「京都人の幻のかに」
8、「えっちゃん」
という順になるだろうか。 並べてみると、気が付くのは、ほとんどが恋がテーマになっていること。「木屋町 珈琲夢譚」は、父親と息子の話だが、これもまた親子の恋、ととることもできる。また「京都人の幻のかに」もまた、食に対する強烈な恋と解釈することも可能であろう。可能であるが、この二つは敢えてカットする。
そうとなれば「えっちゃん」もまた、女性同士の恋心ということになるが、これもまたカットか。「真名井の女」も若い男女の絡みのストーリーだが、私自身にはやや時代遅れ、時期を逃してしまったストーリーなので、敢えて涙のカット。そういうなら「桐ダンスの恋文」だって、若い人たちの恋愛ストーリーに力を借り過ぎている。
それならそれなら「わたしの大黒さん」だって、若い人たちの恋愛に軸足を置いているじゃないか、とカッート! となると、残るは、「逢瀬の桜」と「月待ちの笛」の争いとなる。今まで私は「逢瀬の桜」が最後まで残るものと思っていたが、いやいや実は、大人の恋としては「月待ちの笛」のほうがはるかに優れているのではないか、などと揺らぎ始めた。
「逢瀬の桜」は何度も何度も見てしまったから、敢えていま再生しようとすればむしろ「月待の笛」のほうが先にくる感じだ。大人の恋。子供のいない夫婦だけに、心情そのものが浮き上がってくる。しかし、このようなストーリーを創り出せる人って、どんな人なんだろう。すごいもんだな。
そして、こうして気づくことは、さらにこのドラマのバック音楽が、そのものがダイレクトにこちらのハートに響いてくる、ということだろう。であればこそ、ここでの竜笛というか喉笛(のうかん)の音楽が、さらに胸をしめつける。今日のところは「月待ちの笛」で決めよう。
気づいてみれば、ピアノ曲もなんともいいし、カメラワークもいい。結局、いいことづくめですなぁ。役者たちも達者に、見るものを見事に騙してくれる。こんな作品集を作れる源孝志という人はどんな人なんだろう?
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