「コスモスとアンチコスモス」 東洋哲学のために 井筒 俊彦
「コスモスとアンチコスモス」 東洋哲学のために
井筒 俊彦 (著) 2019/05 岩波書店 文庫 505ページ
No.4348★★★★★
著者についてはイスラム学者という認識があったものの、特にそれ以上の関心はなかった。このたび、テレビ番組の特集で、なかなか素晴らしい「学者」であったことを痛感し、録画番組を何回か繰り返して見ている。
番組の骨子は、幼少時に父親から禅的な教育を受けたのち、キリスト教教育、さらにはイスラム文化との接触により、コーランを直接アラビア語から日本語に翻訳した著者は、イスラム文化を、老荘や仏教、禅などと共通の基盤をもつ東洋思想と位置づけ、さらには、西洋哲学との共通項を模索することによって、世界哲学を打ち立てようとした、ということであった。
その中心の骨子となる究極の核は、いわゆる無や空の思想であり、井筒個人としては、一生をかけて、禅から禅の旅を円環させた、ということになろう。
すでに亡くなられた方であり、確約された時代を考えれば、かなり先駆的な研究を実践された方であり、注目すべき「学者」であるが、当ブログから言えば、その「学者」が曲者であり、哲学や思想、研究という所作に隠れた、実際の存在、生き方そのもののダイレクトな提示がどれだけされているか、ということがテーマとなる。
当然のごとく、一個の人間としては、実際にその人生を生きた方であろうが、それはその方が生きたのであって、私が、私は、どのように生きるのか、という部分に積極的に絡んでこないことには、詳しく論評しようがない、ということになる。
詳しく論評すべきはすでに当ブログではほぼ出尽くしており、個人的には、テーマや標的をこれ以上増やす余裕がないので、すでに文字面を追いかける気はしないが、この方の出自と、この方の終着点には大いに感動し、勇気づけられるものである。
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