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2019/09/12

「自民党 価値とリスクのマトリクス」中島 岳志

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「自民党 価値とリスクのマトリクス」
中島 岳志 (著) 2019/05 出版社: スタンド・ブックス 単行本 – 2019/5/31 
No.4333★★★★☆

 著者はこの参議院選挙後に山本太郎とセットで語られる場面がいくつかあった。雑誌に連載された記事をまとめたもので、ですます調の文章が良くも悪くもこの書を決定づけているところがある。そもそもが、9人の自民党議員の言行録、とくに著書を読み込んで作っている本なので、ダイジェスト本的にならざるを得なかったのだろう。

 リスクの社会化、個人化、そしてリベラルとパターナルで座標をつくり9人の政治家を読み解いている。

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 まず目を通したのは小泉進次郎。一冊も本を出していない彼は、基本、まだしっかりと自分の考えを出せない状態であろう。横軸で真ん中にいるのは、若い世代としてのリベラル的感覚と、安倍やCSISなどの枠組みの中で身動きがとれないのだろう、と解釈する。縦軸も下に下がざるを得ない。世襲議員であるだけに、結局はあやつり人形だな。

 小渕優子は群馬県出身。若くして死亡した父を受け継ぐ形で首相候補になった。その毛並み、その若さ、その女性という存在で、ひときわ注目されているが、いざ実行力となれば、一人立つ、というわけにはいかないだろう。ただ、このマトリックにおいては<Ⅱ>に配分されており、<Ⅳ>安倍と対立する立場にあり、野党統一戦線との合流も考えられる。

 野田聖子も、なぜに首相候補とされるのか定かではないが、とにかく自ら現首相の対抗馬となれば、内閣において重役を任されるわけでもなく、冷や飯を食うことになるのだろう。妊娠、出産、子育て、については複数書籍があると言われ、そのうちの何冊かは名著と言われる。この女性も<Ⅱ>に配分されている。

 河野太郎、父親の代から割とこの親子に好感を持っているのは、横軸でリベラルに振っているからだろう。ただ新自由主義であり、小さな政府を目指す。私個人は、小さな政府でも生きられるライフスタイルを作らなければならないと思うが、これだけ困窮した社会であれば、いまや太郎がいうところの大きな政府で乗り切らなければならない時代だろう。

 岸田文雄。この人はなんだか、よくわからないな。著書も一冊も出してないらしい。風見鶏、日和見主義者、とみられる傾向があるようだ。この人が総理大臣になったら、というイメージがまったくできない。なんだかあのひょこひょこあるくスタイルが、どうもいまいち自信に満ちたものに見えない。マトリックスのど真ん中。つまり、よくわからに御仁。

 加藤勝信。この人もなんだかなぁ。結局、陣笠議員であろう。縦軸で丈夫にあるのは、あまりきついことも言えない性格なのではないか。今回も内閣に入ったようだが、このような身内議員ばかりを集めるようでは、安倍もいよいよ終わりだな。人材が他にないのだろうか。

 石破茂。安倍の対抗馬としてたびたび登場する石破茂だが、けっきょく、対抗軸になるには、縦軸で上に行かなければならない。単に安倍にイッチャモンをつけているだけでは、これで石破も終わりだな、と見くびられてもしかたないかな。

 菅義偉。この人のメディア露出度は抜群で、この9人の中では一番年長。とくに私より年長なのはこの人だけだ。この人は、ここで終わりだと思うが、時期総理候補に推す人も多いらしい。政治は結果だから、その時はその時でこの人がかじ取りをするのだろうか。位置的には、安倍ほど<Ⅳ>化していないが、結果としては同じことだ。

 安倍晋三は、いくつも本を出しているらしいが、本格的な自著と思えるのは当ブログでも読了済みの「美しい国へ」だけのようだ。その言葉から読み取れるものは、まさに「安倍」そのもので、その度合いもすでに極まっている。

 このような自民党に対抗するために、野党がとるべきポジションは明確です。「リスクの社会化」「リベラル」を指向する<Ⅱ>のタイプを選択するしかありません。p216中島 岳志 「野党の戦略」

 「自民党」というタイトルの、自民党を研究した本ではあるが、決してオベンチャラ本ではない。彼を知り己をしれば百選危うからず。なるほど、と思わせられる一冊。

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