「データが語る日本財政の未来」明石 順平
「データが語る日本財政の未来」
明石 順平 (著) 2019/02 集英社インターナショナル 新書288ページ
No.4337★★☆☆☆
太郎 日本の借金が1000兆円をこえていることが問題になっているね。だけど、その借金の9割は国内から借りているものだし、政府は資産もたくさん持っているし、日本人は海外にたくさんお金も貸しているから、全然問題ないんでしょ? p10
はてさてこの本は、この問いかけに対する反論ということになっている。たまたま問いかけ人は太郎となっているが、まさか山本太郎を意味しているわけでないだろう。口調も違うし。だけど、出版が2019/02だから、暗にその意味も掛けていたかもな。
著者は、1984年生まれの弁護士。右からも左からも批判されるかも、と言っているだけに、ニュートラルな姿勢を保っている。結局、暗い未来が書かれているだけかも。
この本に関心を持ったのは、山本太郎が街頭演説しているときに、街頭から若い女性がこの人の名前を出して質問したことがきっかけだった。太郎はさらっと通り過ぎたが、このようなアンチMMT派の論調にも目を通しておきたい。
巻頭の質問は、ちょっと大雑把で、政府の借金と国民の借金は違うということ。政府の借金は必ずしも返し切らなきゃいけないものでもないし、黒字にしなければならない、というのは間違い。外国に債権をもっている世界一の金持ち国だというのは万人が認めるところである。
さて、この本の論調と、太郎とれいわの論調の決定的な違いは、どこを見ているか、ということだ。この本は、国とか日本の財政とかが中心となっているが、太郎とれいわの視線は、常にこの国に住んでいる人々に向いているということだ。しかも、圧倒的多数となっている貧困層や、ロストジェネレーションの今後の未来のことだ。
国に金がないから増税する、というのではなく、この国に住む人の暮らしをどうしたら楽にすることができるか。どうしたら、人びとの声を国会に伝えることができるか、ということだ。
データをどう読むかは、ある種の芸術である。結論が一つだけ、ということはない。この本の論調に巻き込まれるのではなく、自らの主張をもっと明確にして、このデータ群を積極的に使い切る側に回らなければならない。
必要であれば、この本をもっと丁寧に目を通すことも必要だろう。しかし、現在は、結局はMMT以外の活路は開けない。右も左も結論は同じなのである。そして、政治は、結果であるから、よい結果に結びつけるように、人びとのパワーを集めていく必要があるだろう。
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