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2019/02/25

「オン・ザ・ロード1972」<67>08/13 私都(きさいち)村(鳥取)

<66>からつづく

Jkk1
「オン・ザ・ロード1972」 80日間日本一周ヒッチハイクの旅
「時空間」創刊号 1972/11/20 時空間編集局 ガリ版ミニコミ 102p 目次  全日程
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<67>1972/08/13 私都(きさいち)村(鳥取)

 4日間滞在したサクランボユートピアの次に訪問したのは、同じ鳥取県の私都村。この若者共同体について、私(たち)は、おなじ1972年春発行の「ジ・アザー・マガジンYOU」の特集記事のグラビアで知った。

 「YOU」は、ブロンズ社が発行していた雑誌で、当時はやり出した若者文化に特化した特集を組んでいた。最初は読み方も分からない名前だったが、とにかく私たちはこの共同体を日本一周の行程に入れたのであった。

 そもそもは、この私都村(うんどう)は、医師の徳永進氏が主宰したもので、なんらかの明確な目的を持っていたはずなのだが、私たちは、過疎の山中の廃屋を拠点として、多数の若者たちが集合して、今後なにかをやろうとしている、集団と見ていた。

 この旅の後、私たちはミニコミ雑誌「時空間」を創刊することとなり、その中で、大きく「私都村」についてのレポートを特集することとなった。このことからしても、いかにその集団の存在が大きかったかが分かる

 されど、その感銘の度合いは、流峰をトップとして、れおんが中心で、私は割と冷静だった。そもそも訪問しなかった悪次郎は、レポートも書いていない。雀の森という共同性の名前の名づけ親ながら、割りと早期に私たちの共同性から悪次郎が離脱したことは、このあたりから、なにか推測できるものがある。

 私は同じ鳥取であるサクランボユートピアに4日間参加しておきながら、私都村には一泊しかしていない。それに比し、流峰は一週間、れおんは4日間滞在している。この差が、結局このあとの雀の森の活動の指針を指し示していたように、2019年現在の私は思う。

 私が割とこの共同体に夢中にならなかったのは、つまり私は東北の農家出身で、しかも藁葺家屋の大家族に育った、ということが影響していると思う。私はその生家が好きだったが、そのようなモノを求めるなら、何も旅をする必要などない。自宅に留まればいいのである。私はなぜ旅に出るのか。それは、新しい何か別なものを求めていたからである。

 それに比して、流峰は東京池袋のサラリーマン核家族に育った人間だ。他に近親者が側にいたとしても、それは都会っ子の育ち方をしていたことは間違いない。そして彼自身は、そういう環境を否定して、親が勧める東京の大学進学を拒否して、東北の大学に活路を見出して仙台に来たのだった。

 田舎で育った私が、都会で育った流峰の都会的センスに惹かれたことは確かであるし、彼もまた、私の田舎的センスに何事かの一目を置いていたことはたしかである。その流峰が、鳥取の山奥の田舎に、ある種の夢を持ったことは理解できる。

 彼はそもそもそういうモノを作りたかった。一時はその名前を「ちろりん村」と仮称して、県内外の空き農家などを探索したものである。福島の山中や、山形の豪雪地帯、宮城県内の生産農家組合、県北の陶芸村など、それなりの可能性を探っていた。

 その彼が、結局は、その立地条件もさることながら、そこに織りなす人間関係に魅了されたことは理解できる。れおんもまた、宮城県内のサラリーマン家庭に育ったとは言え、茅葺屋根の農家スタイルは新鮮であっただろう。そもそも彼もまた「おもちゃ箱」と仮称した共同体の模索をしていた。

 この二人がこの私都村にほれ込み、このあと何度も足を運ぶこととなり、結局はその流れから、生涯の伴侶を得たことを思えば、彼ら二人にとっては、この私都村は、人生上の大きな出会いであったのだろう。今なら私もそれを理解できる。

 されど、私は私である。18才の少年の夢は、鳥取山中の廃屋農家にとどめることはできなかった。私は、もっと大きな夢を見ていたのである。

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<68>につづく

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