「オン・ザ・ロード1972」<65>08/11 サクランボユートピア(鳥取)(3)
「オン・ザ・ロード1972」 80日間日本一周ヒッチハイクの旅
「時空間」創刊号 1972/11/20 時空間編集局 ガリ版ミニコミ 102p 目次 全日程
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<65>1972/08/12 サクランボユートピア(鳥取)(3)
私はこのサクランボユートピアの滞在中に、今日までつづく人生上の、大きな出会いに立ち会った。それは、ほんの序章であったかもしれない。しかし、相当にショックなものだった。
それは「名まえのないしんぶん」との出会いである。サクランボユートピアの住居スペースの壁に画びょうで簡単に張り付けてあった、謄写版単色刷りのミニコミである。内容はだいぶ忘れてしまったが、「趣味の切手」シリーズなどが掲載されていたように思う。
「趣味の切手」とは、別段に記念切手を集めようというお勧めではない。私たちミニコミの流通には、いろいろなネックがあった。その中のひとつに、郵送料があった。第三種郵便などの許可をとるには大変な発行部数も必要だったし、時間も必要だった。
周囲の人々に手渡しで配る分にはそれほど手間はかからないが、遠くの人に、まして全国的にネットワークを作ろうとした場合、印刷代や原稿料に比すれば、郵送料は莫大なものとなる。そこで、なんとかならないか、と考えた人が、きっといたのだろう。
これから書くことは、もう誰もやっていないだろうし、すでに当時のことは時効だと思うので、書いておく。誰が考え出したのか分からないが、お互いのミニコミを出すときは、切手を貼って、さらにその表面に糊を塗って投函しましょう、と、ただこれだけのことである。
そのことが合法なのか、非合法なのか、今だに分からない。しかし、あとあと私たちがミニコミ活動をし始めて、お互いの連絡をする場合、到着した郵便物から、切手の部分だけを切り取って、コップの水に浸けておくのである。
すると、あ~ら不思議、乾いた糊の上からスタンプされたはずの消印が、消えてしまうのである。実験だけなら、今でもできるだろう。消えることは消えるはずである。ただ現在は消印のシステムも違っていて、切手の再利用はできなくなっているだろう。
このエピソードは、他のミニコミなどにも書いてあって、おそらくかなり流行していたオアソビだったのだろうが、とにかく私はこの「名まえのしんぶん」で知ったように思う。
そして、一番びっくりしたのは、このミニコミの手書きの文字の美しさである。それは、明朝とかゴシックとかいうたぐいのものではなく、手書きの丸文字なのである。やさしい、実にゆったりした文字と、その文章が、とてもマッチしていて、これはピカイチだな、と感じた。
その編集人のあぱっちは、いずれその人柄とともに、あるムーブメントの中心地に立つことになるのだが、とにかくすごいインパクトだった。のちの「存在の詩」のプラブッダの手書き文字も美しかったが、あぱっちの、その気負わない、スマートな文字が、とてつもなく気持ちのよいマッサージに思えたのであった。
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