「オン・ザ・ロード1972」 <26>07/03 富山駅
「オン・ザ・ロード1972」 80日間日本一周ヒッチハイクの旅
「時空間」創刊号 1972/11/20 時空間編集局 ガリ版ミニコミ 102p 目次 全日程
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<26>1972/07/03 富山駅
山形から金沢までの旅。ヒッチハイクの旅は、予定通りというわけにはいかない。そこが難しいところでもあり、楽しいところでもある。一番いいところは、とにかく細かいスケジュールがないので、気ままに一日を過ごせるところである。
だが、時に豪雨に遭い、時にクルマはいくら待てども止まってくれず、時に忘れ物しても戻ることさえできない。この日は、とにかく富山駅に泊まったのだ。例によって駅でのことなんか全然覚えていない。
ふと今思い出したので書いておくが、きっとこの日のことではないのだが、なんとも印象的な思い出がある。
行けども行けども、待てども待てどもクルマは止まってくれず、仕方がないので、おそらくこっちの方だろうと歩き続けていた。ふと自分の進行方向を見ると、同じように歩いている人がいる。
おお、ひょっとすると私と同じヒッチハイカーか? と見間違ったが、どうやらスタイルはちょっと薄汚れているし、背も丸まっている。下げている袋も、カッコいいいリュックサックではない。ああ、あれはプロの乞食さんだ。
家も何もなく、自分は今、ああいう人と同じような身分だなぁ、と落胆しつつ歩いている。と、彼はふと道を直角に曲がって畑の中に入っていった。おや、と思ってみていると、なんと、その進行方向には、小さな小屋があったのだ。
見るからに年季の入ったブルーシートやワラや棒きれ板切れで作られた掘立小屋ではあったが、その日の私には、ずいぶんと立派に見えた。
私には今、小屋も何もない。ただ一人の放浪者でしかないではないか。トボトボと歩いて、雨に打たれて、腹をすかして、ただただ歩いていた。
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