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2018/09/30

「表具屋渡世泣き笑い」 小池丑蔵

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「表具屋渡世泣き笑い」
小池 丑蔵   (著) 1985/04 三樹書房 単行本 190ページ
No.4257★★★☆☆

 私は読む順番を間違えたかもしれない。最初にこちらを読み、あとから「女表具師 技術泥棒攻防記」( 尾形 璋子2002/01 朱鳥社)を読んだのなら、1985年出版のこちらの著書が真作で、それから17年後に出版されたかの本が贋作だ、と簡単に決めつけることができたであろう。

 ところが、一部読書感想にもあった「表彰屋」だけではなく、随所にほぼ同内容の文章が出て来る。性別も年代も違えば、これは同一人物のペンネームによる新作だとは、とても思えない。一般的に言って、あとから出て来た女表具師のほうが「泥棒」した、と考えるのが一般的な読み方だろう。

 いずれにせよ、表装の世界を割と生真面目に理解しようとしていた私の心情は、いちぢるしく、不愉快な次元へと叩き落とされた。「泥棒」した方もしたほうだが、はてさて「泥棒」されたほうも、そのまま放置しているのであろうか。少なくとも、出版差し止めや名誉棄損などで、法的な処置はできなかったものか。

 私はこの世界に首を突っ込んで長く滞在しようとは思っていないので、二冊並べて、あるいはもっと周辺を調べて真贋論争を張りたいなどとはとても思っていないが、少なくとも、この伝統技術に関わる人々への見方が一変してしまった。

 仮に贋作を読まず、こちらの「真作」だけを読んだと仮定しても、おそらく一冊の本としては、「表具屋」だけの話ではなく、それに付随する横にそれていく話が、私にはどうも余計に感じた。もっと素直な技術噺でいいのではないか。ヘタな歴史的なうんちく話は、まぁ、この本で聞かされなくてもいい。余計な部分だ。

 読むタイミングによっては面白かろうが、私のセンスではない。ああ、このような本もあるのか、と、ちょっと表装・表具の世界に目を向けた段階で、裏も表もある世界があるんだな、と納得した。

 思えば、表装の世界で、一番大事なのは裏打ちのワザだった。

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