「九十歳。何がめでたい」 佐藤愛子 (著) / 「さとりサマーディにて」<36>
<36>96歳。何がめでたい 目次
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「九十歳。何がめでたい」
佐藤愛子 (著) 2016/08 小学館 単行本: 223ページ
No.4254★★★☆☆
この本が話題になった二年前。あ、また始まったな、と、私は鼻白む思いだった。ああ、いやじゃ、いやじゃ。なんでこんな台詞が吐けるのかなぁ。長寿者が多くなって、税金を無駄遣いして、そんな超高齢者たちは、さっさと死んじまえ、とでも思っているのかな。いやじゃ、いやじゃ。
いやはや、ごめんなさい。<m(__)m> ごくごく最近まで、そんな気分でおりました。しかし、珍しく我が家の奥さんが、「この本、読む?」とパスしてきた一冊がこの本である。う~ん、と、たじろいだが、まぁ、奥さんとたまには話題を共有するのもイイかな、と思って、まずは預かっておいた。
ちょっとした切れ間に、まずは少しは目を通すことにした。え、なかなか面白いじゃない。ふ~ん、あの女性がこんな文章を書くのかな。90歳、何がめでたい、とは超高齢者たちを揶揄しているのではなく、自分をおちょくっているのだった。あれ・・?
私は、はて、この女性はたしかあの財団の会長かなにかで、結構右寄りの発言の多い人だったよな、とググってみた。あ~、ごめんなさい。<m(__)m> 私は多いに勘違いしていた。あの船舶振興会がパッシングされた時点で、二代目会長に就いたのは、曽野綾子サマでありました。<m(__)m>
どうして、佐藤藍子と曽野綾子が、私の頭の中で混同していたのか確かではないが、少なくとも、元気な高齢の女性、という共通項があって、しかもあまり関心がない人たちなので、その違いさえ(って同一化していたから)調べようともしなかったのだ。
ああ、そんな曽野綾子氏もあの財団が日本財団として名称を変更して会長職についておられたのも1995年から2005年までのことで、すでに十数年前に退職されておられたのであった。(汗)
確かになぁ、あちこちの福祉施設にボート競技のテラ銭をばらまいている財団の現役会長が、「九十歳。何がめでたい」、なんて暴言を吐いたら、そりゃ、切腹ものだろう、(って、女性には切腹はないのかな)。イメージとして、そのイメージを勝手に持ってしまった私が悪いのである。<m(__)m>
2015年当時の女性週間誌に連載した佐藤愛子氏のエッセイが一冊になったもので、表題ばかりが目立ってはいるが、つまりは90歳になった佐藤氏の闊達な世間話である。それはそれ、文字は大きいし、テーマも身近。読んでもすぐに終わりそうな内容で、確かに苦にはならない。
されど、ふと思う。この本を私にすすめた奥さんの真意や、いかに。すぐに連想できるのは、施設にお世話になっているわが母親のことである。思えば、瀬戸内寂聴尼と同年配のわが母親は、この佐藤愛子氏や曽野綾子氏らとともに、数年違いの戦中派の生き残りの一派である。その生命力にかけては、団塊の世代以降のわれら戦争を知らない世代とは、雲泥の差がある。
卒寿をすでに遠く過ぎ、白寿に向かって着々と歩まれているご三方に比較すれば、わが母親は、目も見えず、耳も不自由で、食事どころか、排便も一人でできない老境である。ずっとあの世に近い生きざまを生きている。でもそれで助かっている面もある。
いわゆるボケてはいないのだが、CPUも、メモリーも、HDDも、かなり年代モノになっている。いわゆるインターフェースや、外とのネットが張りにくい状態になっている。ヘタすりゃ、このままスタンドアロンになってしまいそうだ。
そこを何とか、友人の整体師に頼んで、週になんどもスキャンし、デフラグをかけ、時にはパッチを更新してもらっている。私たち家族も、折をみて訪問し、互いの整合性を確かめている。
最近、女優の樹木希林さんが亡くなった。享年75歳。若いといえば、あまりにも若い。彼女にこそ、白寿まで老境をレポートしてほしかったものだ。上記のご三方よりも、はるかに老境というべき世界に突入していたのではないだろうか。
そのことがいいのかどうか、当ブログとしては定かではない。すくなくとも、当ブログの老境のひとつの鏡は、ヘルマン・ヘッセの「ガラス玉遊戯」の世界である。あまり多弁な老境はいらないだろう。誰と比較するわけではないが、さとりサマーディに横たわる、わが母親は、これはこれとして、私は、96歳、めでたい、めでたい、と言っておきたい。
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