« 「禪修行」 富山治夫 | トップページ | 「禅の教え」 宗派と開祖 東由士 »

2018/09/03

「さよなら未来」―エディターズ・クロニクル 2010-2017 <1>

81aez26blul
「さよなら未来」―エディターズ・クロニクル 2010-2017 <1>
若林 恵 (著) 2018/04 岩波書店 単行本: 544ページ
No.4226★★★★★+

 図書館で受け取って、あ、ちょっと失敗したな、と思った。こんなに厚い本なのだ。しかも文字は小さく、ところどころは二段組。う~ん、こんな大冊を今は読んでいる時間も気力もない。もうちょっとコンパクトにならなかったのかな、と愚痴りたくなった。

 1971年生まれ、元平凡社「太陽」の編集者にして、最近まで「WIRED」日本語版の編集長を務めていた。編集畑のひとである。私は最近までこの雑誌の追っかけをして、全冊目標に集めていたところだが、3号あたりから登場したこの編集長の巻頭のエディターノートが好きだった。

 ようやくいわゆる愛読書というべきものを見つけたぞ、というタイミングで、この雑誌は廃刊となり、彼は編集長を解雇された。拍子抜けしたのはこっちのほうだが、本人もまた拍子抜けしたようだ。

 私にはカメラマンマインドもないし、漫画志向や、デザインタレントもないが、編集魂は、少しはあるらしい。そういうスピリットを持っている人がいると、微妙にアンテナが反応する。この著者には、明らかに同種の香がある。類は友を呼ぶのだ。

 だからこそ彼の文章を面白いとも思うし、うざいな、とも思う。そもそも、どこかの編集術の御大みたいに、編集編集と言いながら、実にうだうだと長文を書きなぐっている人たちを見ると、ああ、私は編集などという仕事を、人生の仕事にしなくてよかった、などと、ひとりごちることも度々なのだ。

 編集者なら、この500ページを超える大冊を、せいぜい50ページくらいにまとめるべきだ。さらに言うなら、もし本当に編集の才能が自らにあるのなら、俳句ひとつにせよ、と把住したくなる。(あ、把住とは、なにか強く言うことらしいことが今日分かった)

 著者のうだうだしい長文に対抗するには、読者としては、積読や斜め読み、速読で対抗するしかない。私はこんな長文(雑多な盛り合わせ)を今更、ゆっくり読んで付き合うほど、ヒマではない。いやヒマなのだが、そのヒマを別なことに使いたい。

 まぁ、それにしても突っ込みどころ満載の一冊である。付き合うなら一晩や一週間くらい、付き合えないことはない。いずれそんなチャンスがくるかもしれないが、今付き合うとするなら、本家アメリカ版「WIRED」元編集長の、ケヴィン・ケリーの「インターネットの次にくるもの」のほうだ。

 雑誌の編集マインドという意味では、「スぺクテイター」の編集者=赤鬼・青鬼たちの方が、一段優れているように思う。ケヴィン・ケリーやスチュアート・ブランドに対する取材姿勢も優れている。都会にいてあれこれ批判しているのではなく、郊外へ、地方へ退却し、そのゆとりの中で編集するライフスタイルに見習わなくてはならない。そして、そもそも、取材テーマではなく、取材する自らが問われていることを忘れてはいけない。

Sp1

 自己をはこびて万法を修証するを迷とす、万法すすみて自己を修証するは、さとりなり。迷を大悟するは諸仏なり、悟に大迷なるは衆生なり。さらに悟上に得悟する漢あり、迷中又迷の漢あり。諸仏のまさしく諸仏なるときは、自己は諸仏なりと覚知することをもちいず、しかあれども諸仏なり、仏は証しもてゆく。道元「正法眼蔵現成公案」

 未来を問うのではなく、自らが問われているのだ。

 エディターズ・クロニクル 2010-2017と銘打ってある。当ブログの後半と被る期間ではあるが、当然、それ以前のことどもも書いてあるので、当然、当ブログとのテーマもかなりかぶっている。音楽などについては、当ブログはまったく不足しているが、同じ時代を生きている若き編集者の、ぶっちゃけ噺は、正直面白い。

 レインボー評価にするか、★5にするか悩んだが、とにかく★5+としておく。

91w4yjjx3nl

「WIRED (ワイアード) VOL.1 」特集OUR FUTURE テクノロジーはぼくらを幸せにしているか? なんて、相当面白かったしな。興味津々の内容だった。今後に期待。少なくとも「さよなら未来」なんていうのは、百年早い。カッコつけ方がヘタである。

<2>につづく

| |

« 「禪修行」 富山治夫 | トップページ | 「禅の教え」 宗派と開祖 東由士 »

13)述の巻」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「さよなら未来」―エディターズ・クロニクル 2010-2017 <1>:

« 「禪修行」 富山治夫 | トップページ | 「禅の教え」 宗派と開祖 東由士 »